ヨガで耳にする「八支則」や「ヤマニヤマ」は知っていますか?
「八支則」は、ヨガの哲学書「ヨガ・スートラ」に書かれたヨガの基本となる教えです。ヨガを実修するための8つの段階、行法を示したもので、現在の生活にも応用が出来ます。
ヨガの哲学「ヨガ・スートラ」と「八支則」
ヨガの哲学書「ヨガ・スートラ」には、自分と向き合い、より調和のとれた良い状態へと導く教えが書かれています。
実践する上で重要な8つステップをまとめた「八支則」日々の生活に取り入れることで、ヨガを通して人としての成長へと繋がっていくことでしょう。
それでは、さらに詳しくみていきましょう。
八支則 アッシュタンガヨガとは?
「八支則」はサンスクリット語で「アシュタンガ=8つの枝」と訳されます。「八支則」には、ヨガの行法と日々の生活で気をつけたい事などがまとめられています。
現在ではその教えを少しづつ心がけることで、自分の感情に振り回されたりせず、楽しい日々を送れるよう教え伝えられています。
多くのスタジオでアシュタンガヨガのレッスンがありますが、「八支則」のことではなく別のヨガのスタイルで、本来は「アシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガ」と言います。
シュリ・K・パタビジョイス師によって考えられ、「ヨガ・スートラ」「八支則」の教えを元にヨガのプラクティスを行います。運動量が多く、中級者向けのレッスンが多いヨガとなります。
ヨガの「八支則」とは?
「八支則」と聞くと難しく考えてしまいそうですが、日々の生活に取り入れることで自然と身近なものに変わります。精神力を鍛え、ヨガを通して成長することができます。
① ヤマ Yama(禁戒)
生活環境や人間関係の良い状態を保つための5つのポイント。
1. アヒンサ Ahimsa(非暴力、不殺生)
周りの人に物理的な暴力や言葉の暴力を振るわないように気をつけましょう。また、自分自身へも暴力を向けて傷つけないようにします。思考をする面でも気をつけましょう。
アヒンサは「非暴力」 第一段階のヤマ(禁戒)は慎むべき5つの心得であり、環境や人間関係を良い状態を保つために自制すべきこと。いわゆる、社会的モラルです。
その5つの心得で、ヤマの最初の教えであるアヒンサは、とても大切な教えといわれています。暴力という強い言葉を聞くと、誰しも自分は暴力なんてふるっていないと思うかもしれません。
私も初めてこのアヒンサの教えを学んだとき、「暴力なんて自分とは無縁」だと思い、あまり重要視していませんでした。
しかし、アヒンサの意味はとても深く、とても身近な教えであることに気付きました。
例えば、誰かを傷つける言動を慎むことや、自分の怒りに他人を巻き込まない、誰かの時間を悪口などで奪わない、冷たい視線や態度で傷つけない、不満をぶつけて八つ当たりしない。
このようなことも、アヒンサの教えだと知りました。
マハトマ・ガンディーが独立運動のモットーに「アヒンサ」を掲げ、武器や戦力を使わずして、インドの独立を成し遂げたことは有名な話です。
暴力というと、他人に対するものと捉えがちではないでしょうか。
しかし、アヒンサの教えでは、自分を責めることや自分を傷つける言葉も、自分自身に対する暴力だと説かれています。
無視することも暴力だと云われています。本当の自分を知らないことは、自分自身を無視することなのです。
アヒンサを意識することで、考え方や行動、言葉、生き方全体を変えていくことができる。
2. サティヤ Satya(嘘をつかない)
常に正直で誠実に。見栄を張ったり、他者を傷つけることがないように気遣うことが大事です。
「アヒンサ」を考え他人を傷つけるような真実は言わないように気をつけましょう。
自分の気持ちや願いにも嘘をつかない、というのもサティアの考え方です。
3. アスティヤ Asteya(不盗)
盗むことはしない。欲張ってしまわないこと。相手の時間を奪わないことなどを気をつけましょう。相手への思いやりを持って生活をすることが大事です。
盗むというのは、ものを盗ることだけではありません。気付かないうちに誰かの時間を奪っていないか、無意識の状態に意識を向けてみることもヨガに繋がります。
4. ブラフマチャリヤ Brahmacharya(禁欲)
あらゆる欲望に振り回されて、エネルギーを消耗しないように気をつけましょう。気持ちに振り回されて大事なことを忘れてはいませんか?
過剰な欲望は自分を見失うきっかけになります。
5. アパリグラハ Aparigraha(不貪)
必要以上に執着しないこと。独占欲を抑え、必要以上に持ちすぎないことが大事です。持ちすぎると失うことが怖くなり、他人への嫉妬や怒りへと変わって来てしまうかもしれません。
物だけでなく、過去の自分や他人を執着しすぎると本来の自分を見失ってしまいます。フラットな自分でいることは、今の自分を見つめたり意識づけを繰り返したりすることで培われます。
② ニヤマ Niyama(勧戒)
生活の中で自分自身とうまく付き合うための5つのポイント。
1. シャウチャ Saucha(清浄)
身だしなみや周りの空間、心をきれいに保つこと。普段から過ごす場をきれいに保ち、身だしなみに気をつけることで、自分や他人に不快な思いをさせないように心がけます。
そして、心の清浄とは、嫉妬などのネガティブな思考を取り除くことです。
2. サントーシャ Santosha(足るを知る)
周りの環境や人間関係、自分の能力、健康など、自分が置かれている状況全てに満足し感謝すること。満足していると人からの目線を気にすることなく、自然と笑顔で過ごすことができるでしょう。
サントーシャとはわかりやすくいえば、持っているものに目を向けること。自分にできないことや、足りないと思うことに意識を向けるのではなく、今あるもの、できることに目を向け、感謝する心を養うことがサントーシャの教えです。
自分の周りの人や物、状況、与えられた身体や能力、役割など今あることに意識をまけましょう。そうする事で与えられていることに喜びを感じ、感謝の気持ちが生まれ、自己肯定感を高める事に繋がります。
3. タパス Tapas(苦行)
心を強くするために困難に立ち向かい鍛錬すること。ただし、自分自身を痛めつけたり、我慢することではありません。苦しい状況でも受け入れて成長できるように心がけます。
苦行と聞くとストイックに頑張るというイメージをしてしまうかもしれませんが、自分にとって適切であることが大切です。
4. スヴァディアーヤ Svadhyaya(学習、向上心)
自分を成長にさせてくれるような書物を読むこと。心を調えてより良い方向へと導いてくれる本を読み自身への成長に繋げましょう。
ヨガだけに限らず、学びを続けることは人生において大きなフィールドを占めます。
5. イーシュワラ・プラニダーナ Ishvarapranidhana(信仰)
万物に感謝をして、献身的に生きていこうという気持ちを持つこと(神への信仰心)時代や自然の力など自分ではどうにもならないことを受け入れ、身を委ねること。
③アーサナ Asana(坐法)
瞑想を深めるために、安定し快適に座っているための坐法を学びます。体の柔軟性や力をつけ、長時間座っているために様々なアーサナを練習します。ヨガのアーサナは、体を鍛え整えることで、心も整えてくれます。
④プラーナヤーマ Pranayama(調気)
プラーナヤーマは呼吸法と捉えられますが、本来サンスクリット語の「プラーナ」は生命エネルギーのことを指します。呼吸を整えることで、体のエネルギーを調整していきます。
呼吸は体と心とも繋がっており、呼吸が落ち着けば心と体も落ち着きます。また、しっかりとした呼吸をするには、正しい姿勢が必要です。つまりアーサナを深めることが必要となります。
普段無意識に行っている呼吸ですが、深い呼吸を意識することで体調や感情にも大きな変化を感じられます。
⑤プラーティヤハーラ Pratyahara(制感)
いつも外へと向いている感覚を内側に向けることで、瞑想は深まります。自分自身を客観的かつ冷静的に見ることで、日々の感情に振り回されないよう、鍛錬をしていきます。
⑥ ダーラナー Dharana(集中)
瞑想の第1段階として、意識を1点に集中させます。心が1つに集中することで、1点に向かうパワーが大きくなります。
段階を得て得られた集中力は、仕事や生活の中のメリハリにも繋がります。
⑦ ディヤーナ Dhyana(瞑想)
ディヤーナはサンスクリット語で瞑想の意味。雑念は無く、無に向かっていく深く静かな瞑想状態を指し示します。
⑧ サマーディ Samadhi(三昧)
瞑想が深まり、一点集中しているものと一体感を感じている状態を表しています。自己や周りに惑わされることなく整った世界へ。
以上が8つのステップ「八支則」です。ヤマ、ニヤマの教えは現在でも応用ができ、自身の行動を振り返るときに手助けとなってくれるでしょう。
サマーディは、ヨガを始めたからといって簡単に味わえるものではなく、日々繰り返す練習の積み重ねが必要になります。
最後に
「八支則」を学ぶと、日々の生活を送る中で大事なことに気づかされることが多くなります。
ついつい子供に怒ってしまうことや何かに不満を抱くことは、自分がどこにいるかを考えることで、捉え方を変えることができます。
相手が見れば客観的に見ることができることも、自分自身ではうまく行かないものです。1人では何も解決はできません。ヨガをしている友人や家族とお互いに伝えあって見るのも良いかも知れませんね。
「ヨガ・スートラ」や「八支則」を定期的に読み返すことで、客観的に捉えることができ、自分自身への成長にも繋がっています。もちろん忘れて感情に振り回されていることもあります。
その時、気付くようになることが、まずは「八支則」を考える第一歩となるのではないでしょうか?
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